最近の研究から
最近の研究から
我々の研究室には、核断熱消磁冷凍機が2台あり、1mK以下の超低温での物理現象の研究をしています。液体ヘリウム3の超流動や重い電子系の物性を測定しています。
・エアロジェル中の液体ヘリウム3の超流動
エアロジェルによる不純物効果で液体ヘリウム3の超流動は、転移温度、超流動密度が抑制されます。我々は超音波を使った実験でこの系を調べています。エアロジェルも従来の研究とは異なった空孔率を用いており、超流動の様子が大きく変化していることを観測しています。さらに、その秩序状態の解明も進めています。
・重い電子系物質の量子臨界現象・核磁性の研究
我々の研究室の阿部先生と協力し、重い電子系物質の量子臨界現象や核磁性を研究しています。
帯磁率測定・熱膨張測定などにより、量子臨界点近傍での振る舞いや、核磁性、超伝導と核磁性の共存などを研究しています。
核断熱消磁による超低温実験
極低温実験棟
核断熱冷凍機、ヘリウム液化機、その他実験室
アエロジェル中の液体・固体ヘリウム4の研究
シリカエアロジェルは二酸化珪素(Si02)がシロキサン結合により3次元ネットワーク構造を持ち、非常に密度が低い固体である。Si02が体積を占める割合は1%以下になるものすら合成可能であるから、石英と同じ成分でありながら空気の数倍の比重しかないジェルも作ることができる。
液体Heの超流動は他の物質がすべて固化してしまう温度で起こるため通常の物質に比べ極めて純粋で、理想的な系として実験、理論両面で盛んに研究され、そこから発展した概念は、重いフェルミ粒子系、酸化物超伝導体などの他の理解に重要な役割を果たしてきた。
その一方で、制限された空間における液体Heの超流動の研究ではバイコールガラス、粉体を詰めた多孔質体などが研究されていたが1)、それらの構造はさまざまな形の空間にヘリウムを閉じこめ、その空間同志が弱く結合しているという描像で捉えられていた。合成法や小角散乱実験の項でも述べるように、エアロジェルは厳密に言うと"多孔質"とは呼べない。エアロジェルにはきちんとした壁によって仕切られたいわゆる孔というものはない。このようなことからエアロジェルでは液体Heの中にシリカの鎖状の高分子があたかも不純物のように入っている系と考えられ、従来の制限された空間での超流動研究とは全く異なる。
エアロジェルの性質で述べたようにエアロジェルは非常に密度の低いシリカであるため、機械的強度は非常に弱く、柔らかい。このことが液体Heの音波の伝播にも影響し、バルクとは異なった興味ある性質を与える。
液体ヘリウムの超流動現象、エアロジェルなどの制限された空間内でのヘリウムの固化、結晶成長などの問題を超音波を使って研究している。
磁性体に磁場変化を与えると、磁性体のエントロピーを制御することができます。このとき起こる磁性体の温度変化、磁性体による吸・放熱を磁気熱量効果と言います。磁気熱量効果を利用して、熱機関を作るとカルノーサイクル、スターリングサイクル、エリクソンサイクルなどカルノー効率を持つ冷凍サイクルを構成することが可能で、原理的に高い熱効率の冷凍機を作ることが可能です。
磁気冷凍の研究では、使用する磁性材料の研究と冷凍サイクルを実現する冷凍機の研究の両方が重要です。
これまで、様々な温度領域で動作する磁気冷凍機の研究を行ってきました。
磁気冷凍の研究