








修士論文の公聴会と卒業研究の発表会が行われました。当研究室からは、修士2年生の小畑君と佐藤君、学類4年生の岸本君と高橋君が発表しました。修士の2名は流石の堂々とした発表ぷりでした。4年生の二人も初々しい姿を見せてくれて、今後が楽しみです。4人ともお疲れ様でした。
小畑君は燃料電池用の触媒として注目されている窒素ドープカーボン触媒の活性点をミクロな視点から調べるためのモデル触媒(*1)を構築し、それを元に触媒の活性メカニズム明らかにするという挑戦的で研究室の新たな方向性となる研究に従事してくれました。Erlinaさん、兼子君、Tzu-Yen君、下川君と協力して素晴らしい結果を出してくれました。勤勉でいつも研究を楽しんでいる姿が印象的でした。
佐藤君は、物性物理の未解決者であるFFLO超伝導(*2)の実空間観察のために必要な面内強磁場印加型の希釈冷凍機STMの開発を再開してくれました。吉田さんが物性研で開発を始めた装置ですが、担当する大学院生が卒業して、その後に金沢に赴任した後は安心して任せられる担当学生がいなかったことで、研究がストップしていましたが、手先の器用さと粘り強さと装置開発への情熱を持った佐藤君が研究室に参加してくれたことで再開することができました。
2年目からは後輩である4年生の高橋君を指導しながら、力を合わせて装置開発を進めてくれました。超高真空チャンバーから冷凍機内部のSTMまで2 m以上の距離を輸送できるトランスファー機構の開発など、装置開発を飛躍的に進めてくれました。教育者を目指す佐藤君の指導の元に成長した高橋君が来年度からは装置開発を引き継ぎます。トランスファー機構の開発は高橋君のアイデアが多く生かされたということで、来年度からは高橋君の活躍に期待です。FFLO超伝導の観察も遠くないか?
もう一人の4年生の岸本君は修士1年生の前川君が進めてる電子スピン共鳴STMの開発に参加して、前川君の良きサポート役として装置開発を進めてくれました。チューブスキャナーが割れて、STMヘッドが崩壊するという悲劇を通り越して、STMヘッドを無事作り直してくれました。昨今の日本ではあまり経験することができないSTMヘッド作りを経験したことで、STMの装置に関する理解はとても深まったと思います。岸本君は高周波の勉強も積極的に行い、交流磁場を導入するためのアンテナの設計も行ってくれました。来年度から更なる飛躍に注目です。
*1 モデル触媒:実用的な触媒として適さないが、同様な触媒活性を持ちかつシンプルな構造を持つために、基礎研究を行う上での基盤となる触媒材料
*2 FFLO超伝導:強磁場中などでエネルギー方向にスピン偏極した電子系において実現することが理論的に予想されている、有限の重心運動量 qを持つ超伝導電子対を有する超伝導。強磁場でも生き残り、超伝導特性が空間的に変調するという特徴を持つことが予想されている。